「婿養子になることも検討しているが、メリットとデメリットを知りたい」
男性の中には、このように考える方も少なくありません。
「婿養子になるかどうか」は結婚後の人生を大きく左右する選択なので、慎重に考えるのが大事です。
この記事では、そんな婿養子のメリットを「経済面」「家族面」に分けて6つ解説し、デメリットを5つ紹介します。
婿養子のメリット:経済面
婿養子には経済面のメリットがあります。
主な経済面のメリットは以下の4つです。
- 相続権が増える
- 結婚資金など高額な出費を援助してもらえる
- 妻の家に住むことになるため家賃などが発生しない
- 新しいキャリアを築ける
ただし、これらは養子縁組することによってはじめて生じるメリットです。
後述しますが、養子縁組の手続きをしない限り「婿養子」とはならず、これらのメリットは得られません。
それぞれ解説します。
相続権が増える
婿養子になると、相続権が増えます。
具体的に言うと、「実親」と「養親」両方の相続権が得られるのです。
婿養子の相続権に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。
結婚資金など高額な出費を援助してもらえる
結婚資金や引っ越しなど高額な出費を、新婦側の家族に援助してもらえる可能性があります。
男性が「来てもらう側」になるからです。
一般的な結婚の場合、結婚資金や引っ越し費用などは基本的に「男性側」が多く支払います。
婿養子だと多く支払う必要はないどころか、場合によっては全額負担してくれるケースもあるのです。
妻の家に住むことになるため家賃などが発生しない
婿養子になると、毎月の出費を減らせる可能性があります。
妻の実家に住むようになることが多いからです。
一般的な結婚の場合、夫婦で新居を構えます。
賃貸にせよ分譲にせよ、月10万円のところに住む場合、年間で120万円の出費が発生します。
そこで10年生活すると、家賃やローンの支払いだけで1,000万円以上のお金を減らすことになるのです。
一方、婿養子になって妻の実家に住むと、10年で1,000万円以上のお金を節約できます。
あくまで一般例に過ぎませんが、家賃を払う必要がないからこそゆとりのある生活を実現させられます。
新しいキャリアを築ける
婿養子になって、新しいキャリアを築く方も少なくありません。
女性の両親が経営している事業を「跡継ぎ」として引き継げる可能性があるからです。
一般的に、サラリーマンが経営者になるには起業するか、仕事で成果を出して昇進するしかありません。
起業はハイリスクですし、昇進しても経営に携われるのはほんの一握りです。
婿養子として女性の両親が経営している事業を承継すれば、ほぼノーリスクで経営者になれます。
実際に、婿養子として事業を継承し成功を収めた経営者は珍しくありません。
たとえば、次の著名な経営者はすべて婿養子として事業承継しています。
- 鈴木修(スズキ株式会社)
- 尾山基(アシックス)
- 松井道夫(松井証券)
婿養子になって事業承継することによって、人生を変えられる可能性もあるのです。
婿養子のメリット:家族面
続いて、婿養子のメリットを「家族面」から見ていきましょう。
家族面における婿養子のメリットは、主に3つあります。
- 「嫁姑問題」が起こりづらい
- 妻の家族と仲を深められる
- 大黒柱としての責任感が和らぐ
それぞれ具体的に解説します。
「嫁姑問題」が起こりづらい
婿養子の場合、いわゆる「嫁姑問題」が起こりづらいというメリットがあります。
女性の実家に住むことが多いからです。
既婚者の女性に「姑に対してストレスを感じることはあるか?」という質問をしたところ、同居・別居では次のような結果が現れました。
このように、男性の実家で同居するとほぼ確実に「嫁姑問題」が発生してしまいます。
「嫁姑問題」が起こると家族間の仲が悪くなり、最悪の場合、離婚に繋がりかねません。
実際に裁判所のデータによると、年間で5,000件以上の夫婦が「家族親族と折り合いが悪い」という理由で離婚しているのです。
上述した画像のとおり、嫁・姑が別居していると「嫁姑問題」が発生する可能性はぐっと低くなります。
妻の家族と仲を深められる
婿養子の場合、妻の家族と仲を深めやすいというメリットもあります。
妻の実家で暮らすことによって、自分を知ってもらえるからです。
一般的な嫁入り結婚の場合、妻の家族とは年に数回程度しか顔を合わせません。
だからこそ、関係が悪くなったり仲がこじれたりする恐れもあります。
上述した裁判所の離婚事由によれば、年間で2,400件以上の男性が「家族親族と折り合いが悪い」として離婚しています。
婿養子だと、妻の家族とトラブルになるリスクを極力減らすことができます。
つまり、嫁姑問題も婿母問題も回避できる可能性があるのです。
大黒柱としての責任感が和らぐ
婿養子は大黒柱としての責任感が和らぎます。
上述したとおり出費がかなり少なくなるので、精神的に安定するのです。
一般的な嫁入り結婚だと、家賃や光熱費が毎月発生しますが、これらは基本的に男性が多めに払います。
日本は女性よりも男性のほうが「約100万円も平均年収が高い」とわかっているため、多く求められることが多いのです。
30代の男性 | 30代の女性 |
---|---|
474万円 | 378万円 |
こういった点から、男性は「大黒柱」として常に責任感を抱かなければなりません。
人によっては、そういった責任感がプレッシャーとなって精神的に疲弊してしまうケースもあります。
婿養子は「男性が疲弊しにくい」というメリットもあるのです。
婿養子のデメリット
婿養子はメリットばかりではありません。
次のようなデメリットがあることを覚えておきましょう。
- 実親・養親両方の扶養義務が発生する
- 肩身が狭くなる
- 名義変更などの手間がかかる
- 養子縁組・解消の手続きが必要
- 経営者としてのプレッシャーがある
それぞれ解説します。
実親・養親両方の扶養義務が発生する
養子縁組すると、実親・養親両方で扶養義務が発生します。
民法で次のように定められているのです。
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
e-GOV
具体的に言うと、実親・養親が自分たちだけで生活できなくなった際に、経済的に援助しなければなりません。
養子縁組していなければ結婚していたとしても「赤の他人」なので、扶養義務は発生しないのです。
ただ、そもそもお互いの家族を支え合うのは夫婦として当然のことなので、養子縁組だから発生するデメリットというわけではなく、結婚にひもづくことと捉えると良いでしょう。
肩身が狭くなる
婿養子は肩身が狭くなる場合もあります。
「一人だけ血がつながっていない」という状態になるからです。
特に、妻に兄弟がいる場合、よく思われない可能性があるので気をつけてください。
婿養子を迎えることによって相続人が増え、一人あたりの相続分が減ってしまう恐れがあるのです。
もっとも、兄弟がいないからこそ「跡継ぎが欲しい」と考えているわけであり、このようなトラブルは多くありません。
また、「婿養子を迎え入れたい」と考えている家族は、本物の家族同然に接してくれることが多いです。
しっかりと話し合ったうえで「婿養子を迎え入れる」という結論を出しているため、のけもの扱いされることは基本的にありません。
名義変更などの手間がかかる
婿養子は事務的な手続きに時間がかかります。
養子縁組すると苗字を変えなければならないからです。
具体的には、次のような名義変更が必要です。
- 住民票
- 銀行口座
- クレジットカード
- 携帯電話
- 生命保険(契約者や受取人)
- マイナンバー、社会保険関係
- パスポート
- 仕事で使う名刺、はんこ
ただ、最近ではオンラインで変更できるところも増えています。
昔よりは楽になっているので安心してください。
養子縁組・解消の手続きが必要
婿養子は、養子縁組する際や解消する際に手続きが必要です。
たとえば、養子縁組する際は以下の書類を役場などの行政機関に提出しなければなりません。
- 養子縁組届書
- 届出人の印鑑
- 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)※養親および養子の本籍が届出地の市区町村でないときのみ
- 本人確認書類
- 家庭裁判所の許可書謄本※未成年者を養子にするとき、後見人が被後見人を養子にするときのみ
書類に記入するだけなので、難しいことではありません。
養子縁組は、配偶者が亡くなったり配偶者と離婚したりしても解消されないので注意してください。
経営者としてのプレッシャーがある
婿養子になると、大黒柱としてのプレッシャーに頭を悩ませる必要は少なくなります。
一方、事業承継する場合、経営者としてサラリーマンとは違ったプレッシャーを感じることになるのです。
たとえば、サラリーマンは何もしなくても給料がもらえますし、万が一、収入が減ったとしても誰にも迷惑をかけません。
事業承継して経営者になった場合、収入が減ると、自分だけじゃなく従業員を路頭に迷わせることになりかねません。
親御様目線で見ると「これまでに築き上げてきたものをしっかりと継承してほしい」という想いがあるのも事実です。
基本的には親族のバックアップがありますが、周囲のサポートを得るために、従業員などの根回しをやったうえでチャレンジングなことに取り組むという姿勢も大事です。
まとめ
婿養子のメリット・デメリットをまとめます。
- 養子縁組して婿養子になると、相続権が2倍(実親、養親)になる
- 妻の実家で住むことになると、家賃や光熱費の支払い義務がないためお金を貯めやすい
- 事業承継すると、経営者としてのキャリアをはじめられる可能性がある
- 一方で、実親、養親両方の扶養義務が発生する
- 肩身が狭くなる危険性や経営者としてのプレッシャーを感じるというリスクもある
このように、婿養子は男性にとってメリット・デメリットがあります。
今回紹介したメリット・デメリットを自分の中で整理して、「婿養子になることを視野に入れるかどうか」を考えましょう。