「跡取りが娘しかおらず、不安」
「娘婿が会社を継ぐという選択をしても問題ないのか」
日本は「9割が同族企業」と言われており、このような不安を抱えている経営者様も少なくありません。
娘婿が会社を継ぐのは課題があるのも事実ですが、会社を存続させる・発展させる選択肢としておすすめです。
この記事では、娘婿が会社を継ぐ現状と課題を3つ説明し、メリットや検討すべきポイントなどを詳しく解説します。
娘婿が会社を継ぐ現状と課題
はじめに、娘婿が会社を継ぐ現状と課題を紹介します。
以下3つの点に気をつけてください。
- 婿養子になってくれる男性を探すのが難しい
- 子どもの相続割合が減る可能性がある
- 離婚したときに会社を乗っ取られるリスクがある
具体的に解説します。
婿養子になってくれる男性を探すのが難しい
もっとも難しいのが「婿養子になってくれる男性を探すこと」です。
なぜなら、多くの男性が「婿に行く」のではなく「嫁に来てほしい」と考えているからです。
婿養子を探す方法はいくつかあります。
- 人の紹介
- 婚活パーティー
- マッチングアプリ・婚活アプリ
- 結婚相談所
中でもおすすめなのが「結婚相談所」です。
「婿養子でも問題ないかどうか」という意思表示がわかるのは結婚相談所だけです。
ただ、「婿養子でも問題ない」と考えていても、男性が会社の「跡継ぎ」としてふさわしいとは限りません。
だからこそ、結婚承継のような「事業承継に特化した結婚相談所」を選ぶのがおすすめです。
子どもの相続割合が減る可能性がある
娘婿を婿養子として迎え入れると、家族間で揉めてしまう恐れがあります。
相続人の相続割合が減る可能性があるからです。
たとえば、子どもが2人いると、相続権は「妻に1/2、子どもに1/4ずつ」です。
しかし、婿養子にすると子どもが増えるので、「妻に1/2、子どもに1/6」ずつとなり一人あたりの相続割合が減ってしまいかねません。
結果として「家族間に亀裂が入る」という可能性があるのです。
離婚したときに会社を乗っ取られるリスクがある
万が一、娘と離婚したときに、会社を乗っ取られるリスクは捨てきれません。
婿養子でももともとは「赤の他人」だからです。
会社を引き継いで株を娘婿に渡しているのであれば、会社を乗っ取られてしまいかねません。
ただ、乗っ取られないよう工夫することも可能です。
乗っ取られない工夫は記事の後半で説明します。
娘婿が会社を継ぐメリット
課題はありながらも、娘婿が会社を継ぐのはメリットが多いです。
主なメリットは以下の4つです。
- 相続権が増える
- 業績をUPさせられる可能性がある
- 娘を跡継ぎにする必要がなくなる
- 会社を身内に引き継げる
詳しく解説します。
相続権が増える
まず、娘婿を婿養子にすると相続税を抑えられる可能性があります。
法定相続人が増えることで、相続税の基礎控除が増えたり保険金などの非課税枠が増えたりするからです。
具体的な金額は下をご覧ください。
- 基礎控除:+600万円
- 生命保険金の非課税枠:+500万円
- 死亡退職金の非課税枠:+500万円
相続人一人あたりの相続割合が減ることから「家族間で揉めやすい」というデメリットはあるものの、このように控除や非課税枠が増えるのも事実なのです。
業績をUPさせられる可能性がある
会社を引き継いでもらえるどころか、業績UPも期待できます。
経済産業省のデータによると、「経営者を交代しなかった会社」より「経営者を交代した会社」のほうが「経常利益が上がりやすい」とわかっているのです。
出典:事業構想
先代や自分が大きくしてきた会社を、娘婿に継いでもらうことでさらに発展させられる可能性があります。
娘を跡継ぎにする必要がなくなる
娘を跡継ぎにするのは、さまざまなデメリットやリスクがあります。
たとえば、女性は男性よりも体力に劣ることから労働時間が減りかねず、それに伴って売上が減少してしまう恐れもあるのです。
娘婿が会社を継いでくれれば、デメリットやリスクを回避できます。
会社を身内に引き継げる
娘婿を後継者にすることで「会社を身内に引き継ぐことができる」というメリットがあります。
血はつながっていませんが、身内であることに代わりはありません。
従業員などに会社を引き継ぐと、税制の面で負担が大きくなってしまいます。
また、会社が完全に自分の家から離れてしまうリスクも発生します。
身内に会社を引き継いだ場合、第三者に引き継ぐよりもそういった心配を軽減できるのです。
娘婿に会社を継ぐ流れ
ここからは具体的な「娘婿に会社を継ぐ流れ」を紹介します。
娘婿に会社を継ぐ流れは以下3つのステップです。
- 婿養子の手続きをする
- 会社を引き継ぐ
- 株を譲渡する
それぞれ解説します。
婿養子の手続きをする
まずは娘婿を婿養子にするための手続きが必要です。
「婿」と「婿養子」は似ているようで異なります。
具体的に言うと、「婿」には相続権がなく「婿養子」には相続権があります。
婿養子にするには、養子縁組の手続きが必要です。
養子縁組の手続きは書類を提出するだけなので、難しいものではありません。
会社を引き継ぐ
娘婿を婿養子に迎え入れたら、会社を引き継ぎます。
具体的な流れは以下のとおりです。
- 引き継ぐ側(娘婿)がすぐ理解できるよう経営状況を明らかにする
- 引き継ぎ候補者の育成期間を設ける
- 引き継ぎ計画と事業承継計画を策定する
- 内部・外部に会社の引き継ぎを知らせる
- 経営権や株式、実務の引き継ぐ
経営権や株式、実務を引き継ぐ方法は下で解説します。
株を譲渡する
法人の場合、経営者が持つ株を後継者に譲渡します。
株を譲渡しなければ、いわゆる「実質支配者」とは呼べないからです。
譲渡には、主に3つの方法があります。
売買 | 株式譲渡契約を締結し、買主が金銭などで株式を購入し会社を引き継ぐ方法 |
生前贈与 | 株主が生存しているうちに、株式を無償で譲り渡す方法 |
相続 | 株主が死亡したと同時に、相続人が株式を取得する手法 |
一般的なのは生前贈与ですが、くわしい手順は以下のとおりです。
- 株式価格の評価
- 贈与契約書の作成
- 契約実行
- 確定申告
税理士や会計士、金融機関に相談しながら手続きを進めましょう。
娘婿が会社を継ぐ際に検討すべきポイント
何も用意せず会社を引き継ぐのはリスクがあります。
たとえば、しっかりと節税対策について知識を深めていなければ、高い贈与税が発生してしまう恐れもあるのです。
そこで、ここでは「娘婿が会社を継ぐ際に検討すべきポイント」を3つ紹介します。
- 相続時精算課税制度
- 事業承継税制
- 信託
やや単語は難しいですが、わかりやすく説明していきます。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、簡単に言うと、贈与税の代わりに相続時に税金を支払うという制度です。
単純に「納付を先延ばしする」ようなイメージを抱きますが、いくつかメリットがあります。
- 2,500万円まで非課税で贈与できる
- 2,500万円を超過した分も課税されるのは一律20%
- 生前に贈与ができるため相続時の揉め事を回避できる可能性がある
たとえば、株式に2,500万円の価値がついたとしましょう。
そのまま贈与してしまうと、2,500万円に対して45〜55%程度の贈与税が発生します。
相続時精算課税制度を使えば、2,500万円までなら贈与税は発生しません。
さらに、超過した分も一律で20%の贈与税しか課税されないのです。
こういった点から資産を減らすことが期待できるため、相続時の揉め事を回避できる可能性があります。
事業承継税制
事業承継税制とは「会社の事業を継続することを条件に、後継者に対して発生する相続税や贈与税を全額免除する」という制度です。
メリットは非常に大きいですが、さまざまな条件があります。
詳しく言うと、次のような条件を最低でも5年間守らなければなりません。
- 後継者が会社の代表者であり続けること
- 後継者が会社の株式を保有し続けること
- 会社の雇用の8割を維持すること
たとえば、5年以内に離婚し、娘婿が会社の代表を辞すことになったとしましょう。
そうすると、娘婿は生前贈与で受け継いだ株式の贈与税を支払わなければならないのです。
さらに、贈与税には「利息」が発生してしまいます。
もっとも利息は年0.7%なので、そこまで大きな負担にはなりません。
しかし、このように「メリット」と「リスク」があることを把握しておきましょう。
信託
上述したとおり娘婿に会社を継ぐと、離婚などがあったときに乗っ取られてしまう恐れがあります。
ただ、そういった「乗っ取りのリスク」は準備しておくことで回避できます。
それが「信託」です。
信託とは「財産を家族に残す一方で、実際に運用管理する権利は他の人に託す」という方法です。
離婚リスクを回避するには、次のように信託を設定しましょう。
- 信託の対象:株式
- 受託者(会社の経営権を持つ人):娘婿
- 受益者(株式の保有権利を持つ人):先代経営者
こうすることで娘婿を会社の後継者にできるうえに、万が一、離婚などで養子縁組が解消されても手元に株式が残ります。
もっとも株式を信託すると、娘婿がいわゆる「雇われ社長」になってしまいます。
「自分を信用してくれていないんだな」と思われる危険性もあり、娘婿のやる気やモチベーションの低下を招いてしまう場合もあるので気をつけてください。
娘婿が会社を継ぐ際に先代ができること
会社を引き継ぐ際に大事なのが「準備」です。
ここでは先代が娘婿のために準備できることを2つ紹介します。
- 教育・バックアップ体制を整える
- 婿養子となる男性に寄り添う
具体的に解説します。
教育・バックアップ体制を整える
娘婿に会社を引き継ぐ際、教育・バックアップ面で体制を整えましょう。
教育・バックアップする際のポイントは2つあります。
- 直接的なサポート:ノウハウの伝達や人脈の提供など
- 間接的なサポート:新規事業を任せて経営者としての自信を培うなど
ノウハウだけを伝達しても、経営者としての自信がなければ経営はうまくいきません。
反対に、新規事業を任せて経営者としての自信があったとしても、会社のノウハウや人脈がなければ内外で軋轢が生じる場合もあります。
このようなリスクを発生させないためにも、直接的・間接的両方で娘婿を支援しましょう。
婿養子となる男性に寄り添う
会社を引き継ぐ際は、押し付けるのではなく悩みや不安に対して寄り添うのが大事です。
もっとも大きなプレッシャーを感じるのは娘婿となる男性だからです。
「あれもこれも」と落ち着けてしまうとプレッシャーに押しつぶされてしまいかねません。
結果として会社経営が難しくなってしまいかねないどころか、離婚などに発展する恐れもあります。
男性の気持ちを理解して、ともに歩んでいくようにしましょう。
跡継ぎにふさわしい娘婿の特徴とは
いわゆる事業承継結婚を目指す場合、娘婿が跡継ぎにふさわしいかどうか判断する必要があります。
跡継ぎにふさわしい娘婿の特徴は以下のとおりです。
- 人柄や家柄に問題がない
- 経営者としての素質を持っている
- 従業員を導くリーダーシップがある
- 一定レベルの実績やビジネスセンスがある
- ご息女を守っていける
それぞれ解説します。
人柄や家柄に問題がない
人柄はもちろんのこと、家柄に問題がないかもチェックしましょう。
家柄に問題があって結婚が破談になるケースは少なくありません。
ただ、人柄と違って家柄は「問題ないかどうか」を見抜くのが非常に困難です。
詳しくは下の記事をご覧ください。
経営者としての素質を持っている
一般的なサラリーマンと経営者は必要なスキルが異なります。
サラリーマン | 経営者 |
与えられた業務を的確に遂行するのが大事ワークライフバランスを大事にし、私生活と仕事を両立しなければならない職場の同僚や上司などと円滑にコミュニケーションを取る | 従業員に業務を命じるとともに新しいビジネスを創造するのが大事ワークライフバランスはもちろんのこと、従業員の人生も引き受けているという責任感を持たなければならない円滑なコミュニケーションを心がけるとともに、ときには厳しい言葉や処遇を考えるのも大事 |
娘婿と実際に話し合い、こういった経営者としての素質があるかどうかを見極めましょう。
従業員を導くリーダーシップがある
経営者にとってもっとも大事なのはリーダーシップです。
なぜなら、会社の最前線に立って他企業と取引したり、従業員をまとめたりしなければならないからです。
いくら現職で結果を残していても、人の前に立つリーダーシップがなければ経営者として勤まりません。
ただ、なかには努力や学習によってリーダーシップを身につけるケースもあります。
娘婿が努力や学習を怠らないタイプか、素直に人の意見を受け入れられる器があるかを見極めてください。
一定レベルの実績やビジネスセンスがある
娘婿がどのような仕事をしてきたか、ビジネスセンスはどうかを確認しましょう。
これらは話し合っただけではなかなか見極められません。
一緒に行動したり実際に仕事を任せてみたりして、「本当に事業を任せられるかどうか」を判断するのが大事です。
ご息女を守っていける
経営者にふさわしい素質を持っていたりビジネスセンスが十分だったりしても、ご息女に対する気持ちに嘘や偽りがあれば、結婚に賛成するべきではありません。
ご息女を幸せにできないのであれば、娘婿を跡継ぎにするのはデメリットしかないからです。
たとえば、極端な話にはなりますが、経営権(株式)を奪われた挙げ句、ご息女と離婚してしまう可能性も考えられます。
このような事態を避けるためにも、娘婿となる男性がご息女をどう思っているのか、本心を聞き出すのが大事です。
娘婿を見つけるなら結婚承継
娘婿に会社を継ぐ際のポイントをまとめます。
- 難しいのが「娘婿となる男性を探すこと」
- 婿養子を後継者にすると、業績UPを見込めたり相続時の控除が増えたりといったメリットがある
- 娘婿に会社を引き継ぐ流れは「婿養子の手続きをする」「会社を引き継ぐ」「株を譲渡する」
- 「相続時精算課税制度」「事業承継税制」「信託」の3つを検討する
- バックアップ体制を整え、男性を支援する
大事なのが「娘婿となる男性をどうやって見つけるか」です。
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